女子硬式野球物語「サクラ咲ク」重版決定及び「花咲くベースボール」出版1周年記念特別寄稿
今年3月に上梓した女子硬式野球物語第2弾「サクラ咲ク」が7月に重版され、皆様に深く感謝申し上げます。また、昨年7月に同じく初の女子硬式野球物語「花咲くベースボール」が発刊されてから1年が経ちました。感慨深い思いでおります。
これらの拙著ができるまでをわずかながら語りたいと思います。
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女子硬式野球物語 本ノ誕生物語 その1-②
「よし、やってやろうじゃないか!」
四津のお通夜の席で私は、女子硬式野球の黎明期に携わった駒沢学園女子高校の蘇武監督、蒲田女子高校の秋元監督、埼玉栄高校の斉藤監督、花咲徳栄の阿部先生にある伺いを立てていた。
「実は1ヶ月前の病院で四津さんから、女子硬式野球の本を書いてくださいと言われたのですが…。私が書いていいものでしょうか…?」
すべての監督たちが、こう言ってくれた。
「濱本先生、いつか書いてください!お願いします!」
それから四津が亡くなられて12年の星霜が経過するのであるが、女子硬式野球の父である四津の足跡を綴った書籍がまったく世に出ることはなかった。逆に女子野球日本代表チームのワールドカップでの連勝や、女子プロ野球創設の話題ばかりが様々なところで広報されるものの、四津のことが公の場で語られることはほとんどなかった。挙げ句の果てには、四津に関する記事を詳しく書き書籍に残そうとした原稿が、没になることさえあった。
私はこの風潮を静かに感じ取り、正しい女子硬式野球の歴史を残さなければならないと、腹の底から決心をしたのである。2016年の夏の全国大会が、女子硬式野球の20回目を数える記念すべき大会となることを期に、四津の遺言であった女子硬式野球の本を書こうと私は動き始めた。
本など書いたことのない素人の私は、女子野球の情報を発信しているホームページ「がんばれ!女子野球」のサイトを自費で運営されている飯沼素子さんのもとを訪ね、共著で本を出すことをお願いした。
早速、本の企画書を作成し、野球・教育関係の出版社に書籍発刊のお願いをするが、女子硬式野球の本は採算が取れないなどの理由ですべてに断られた。
「これが現実なんだ…。」
そう思い知った私は、次なる手を考える。
「飯沼さん、出版社がだめなら自費出版というのはどうでしょう? 費用はどれくらいかかりますかね?」
「先生、1000部くらいの出版で、最低でも200万円くらいが相場らしいです…。」
私はあまりの高額に驚くと同時に悩んでいた。
「もし自費出版となると、飯沼さんには取材の時の交通費や、執筆した原稿料が入らなくなってしまいますが…。」
「先生、私は女子野球から、お金をもらおうとは思っていませんよ!」
何とも力強い言葉が帰ってきた瞬間に私は、こころに決めたのである。
「よし、自費出版でやってやろうじゃないか!」