女子硬式野球物語「サクラ咲ク」重版決定及び「花咲くベースボール」出版1周年記念特別寄稿
今年3月に上梓した女子硬式野球物語第2弾「サクラ咲ク」が7月に重版され、皆様に深く感謝申し上げます。また、昨年7月に同じく初の女子硬式野球物語「花咲くベースボール」が発刊されてから1年が経ちました。感慨深い思いでおります。
これらの拙著ができるまでをわずかながら語りたいと思います。
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女子硬式野球物語 本ノ誕生物語 その1-③
「四津さん!約束を…」
野球界にはどの時代にも異端児と呼ばれる選手が登場する。そしてまた出版業界にもそのように呼ばれる人物がいた。幻冬舎の創設者、見城徹氏。かねてよりその信念に共感を覚えていた私は、幻冬舎のグループ会社に自費出版部門があることを知りその門を叩くこととなる。担当者からは自費出版に関することを懇切丁寧に説明を受け、さらにできる限りの配慮をしていただき契約をするに至った。こうして昨年7月に念願であった初の女子硬式野球本「花咲くベースボール」が発刊されることとなる。
当初、共著者である飯沼素子さんより渡された原稿のタイトルを初めて見たとき、自分が「花咲徳栄高校」の教員であるため「花咲く」というタイトルが引っかかり素直には承諾はできなかった。だが、飯沼素子さんの娘さんが放送作家をされており、その娘さんが今回の本を読まれタイトルを一生懸命考え、飯沼さんもタイトル名をあまり気にすることはないということで最終的に了承したのである。
「花咲くベースボール」を発刊し、多くの方々が喜ばれた。
全国センバツ大会を誘致した兵庫県市島町の方々は、自分たちの苦労でセンバツ大会が開催されたことに誇りを持たれ、中には、「いつかこの女子硬式野球物語が映画になると面白いですな」と言ってくださる方もおられた。
また、四津の盟友であり、四津と二人三脚で女子硬式野球の歴史を築き上げた全国高等学校女子硬式野球連盟初代審判部長でもある、元女子ノンプロ野球チーム選手の高橋町子さんから、「先生、やりましたね。四津さんが天国で喜んでいますよ」と、電話口よりこころ温まるお言葉をいただき恐縮した。 反面、「先生、憧れの印税生活ですね」と何人かの人に言われたが笑顔でかわしていた。さらに家族からは、「お父さん、そんな売れもしない本にお金を出すなんてバカじゃない」と散々なことばを浴びせられていたのである。
しかしながら、喜びの極めつけは四津のお奥様である初代(はつよ)様から、一通のお手紙を頂戴したことであった。実は奥様は、数年前から字が書けない状態が続いていたのだが、一生懸命に筆を執られ、私宛にこのたびの女子硬式野球本の上梓に対して、わざわざ感謝の礼状を書いてくださったのである。
その内容は、本の内容や装丁にやさしさが感じられたこと、主人には最後まで癌だということを隠し続けていたこと、自分は主人が女子硬式野球に対してどれくらい必死にやっているのかが分からない日々を過ごし、主人が亡くなったあとには女子硬式野球に関する資料さえもすべて誤って紛失してしまい、大変申し訳ないことをした…などということが丁寧に記されていた。
私はこの一通のお手紙で、すべてが報われたと心から思った。
自費出版費用の工面から出版までに飯沼素子さんと共に費やした労力や、家族からの思わぬ反対は大変ではあったが、四津の奥様の感謝の気持ちを拝読しながら、在りし日の四津の面影を想い出し、年甲斐もなくまた恥じらいもなく、その手紙にただただ涙をしたたり落とすのみであった。
「四津さん!約束を果たすことができましたよ!」